AIスクールや講座は数十万円することも多く、「補助金や給付金で安くならないかな」と調べる人は多いですよね。実際、個人が使える公的制度は複数あって、条件が合えば受講料の大半が戻ることもあります。
ただ、ネットでよく見る「最大80%」「最大192万円」といった数字は、条件をすべて満たしたときの上限で、誰でもその額が戻るわけではありません。この記事では、あなたが使えるのはどの制度か・実際にいくら戻るのか・会社に知られるのかを、公式情報にもとづいてやさしく整理します。
先に、いちばん大事なことを。「いくら戻るか」は制度の”上限額”ではなく”あなたの到達段階”で決まるんです。上限だけを見て判断しないのが、失敗しないコツですよ!
リスキリング補助金とは|入口は「雇用保険」で分かれる

「リスキリング補助金」は特定の1制度の名前ではなく、学び直しの費用を国が支援する制度の総称。個人が使える主なものは次の4つです。
- 教育訓練給付(厚労省):雇用保険に入っている(いた)人向け。3つの区分がある
- リスキリング支援事業(経産省):在職者で、転職を目指す人向け
- 教育訓練休暇給付金(厚労省・2025年10月新設):在職のまま長期の休暇で学ぶ人向け
- 求職者支援制度(厚労省):雇用保険を受けられない求職者・無職の人向け
入口を分ける最初の分岐は「雇用保険に入っているかどうか」。会社員として雇用保険に入っている(いた)なら教育訓練給付、雇用保険に入れない・受けられないなら求職者支援制度——というように、あなたの立場で使える制度が変わります。なお、これら国の制度に加えて、東京都の「DXリスキリング助成金」など自治体独自の制度もあるので、国の制度と合わせてお住まいの自治体のサイトも一度確認しておくと取りこぼしがありません。
あなたはどの制度か|対象の切り分け

立場別に、使える制度をまとめました。自分の行を見つけてください。
| あなたの立場 | 使える主な制度 |
|---|---|
| 会社員(現職を続ける) | 教育訓練給付/教育訓練休暇給付金 |
| 会社員(転職を目指す) | 経産省 リスキリング支援事業/教育訓練給付 |
| 離職中・求職中(雇用保険あり) | 教育訓練給付(離職1年以内など) |
| 無職・主婦(雇用保険なし/受けられない) | 求職者支援制度(月10万円の給付+無料訓練) |
| 個人事業主・フリーランス | 経産省事業は対象外。教育訓練給付は雇用保険の加入状況による |
とくに押さえておきたいのが個人事業主・フリーランス。経産省のリスキリング支援事業は対象外(雇用契約を結ぶ在職者が対象)です。また無職・主婦の方は、雇用保険を受けられないなら教育訓練給付ではなく求職者支援制度が候補になります。ここを取り違えると、使えない制度を前提に講座を選んでしまいます。
見てのとおり、同じ「会社員」でも、現職を続けるか転職を目指すかで使える制度が変わります。現職を続けるなら教育訓練給付が基本線、転職まで視野に入れるなら経産省事業も選択肢に。逆に言えば、「まず自分がどの行に当てはまるか」を決めないと、制度選びも講座選びも始まりません。次章から、それぞれの制度を金額と条件まで踏み込んで見ていきます。
教育訓練給付の3区分|まず基本を押さえる

もっとも多くの人に関係するのが、雇用保険の教育訓練給付。一般・特定一般・専門実践の3区分があり、対象講座と還付率が違います。
| 区分 | 戻る割合 | 上限 | こんな講座 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 | 幅広い一般的な講座 |
| 特定一般教育訓練 | 40%(条件付きで50%) | 20万〜25万円 | 速やかな就職に資する講座 |
| 専門実践教育訓練 | 50〜80%(段階制) | 年40万〜64万円 | 中長期のキャリア形成に資する講座 |
ざっくり言うと、「広く薄く」の一般(20%)と、「狭く厚く」の専門実践(最大80%)という設計。専門実践は看護・介護福祉士・専門職大学院や、第四次産業革命スキル(AI・データサイエンス等)といった国が指定した高度な講座に絞られる代わりに、還付が手厚いのが特徴です。なお受給には雇用保険の加入期間の条件(おおむね1〜3年以上)があり、区分や初回かどうかで変わるので、正確な条件は必ずハローワークで確認してください。数字は令和6年(2024年)10月以降に受講を開始する場合のものです。
専門実践の「最大80%」は3段ロケット

ここが、この記事でいちばん伝えたいところ。専門実践教育訓練の「最大80%」「3年で最大192万円」は、条件をすべて満たしたときの上限で、受講しただけでは50%までです。段階を追ってみましょう。
| 段階 | 満たす条件 | 戻る割合 | 年間上限 |
|---|---|---|---|
| ① 受講中 | 講座を受講する | 50% | 40万円 |
| ② 修了+就職 | 資格取得等+修了後1年以内に就職(雇用保険加入) | 70% | 56万円 |
| ③ 賃金上昇 | さらに受講前後で賃金が5%以上アップ | 80% | 64万円 |
つまり「最大80%」に届くには、資格を取り、就職し、賃金まで上げる必要があるということ。学んで終わりなら50%です。ここを知らずに「80%戻るはず」と当てにすると、実際の受取額とのギャップに驚くことになります。「3年で最大192万円」も同じで、これは年間上限64万円(80%達成時)×3年の計算。多くの人にとってこの満額はかなり条件が厳しいので、まず50%が確実に戻るライン、と捉えるのが安全です。
経産省 リスキリング支援事業|転職を目指す在職者向け

もう一つの大きな制度が、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」。こちらは在職者で、転職を目指す人が対象です(正社員・契約・パートなど雇用形態や年齢は問わないが、個人事業主・フリーランスは対象外)。補助の中身は次のとおりで、金額は公式のFAQ等にもとづく「相当額」で示されています。
- 講座の受講費用(税別)の1/2相当(上限40万円)を、講座の修了時に補助
- さらに転職して1年間継続して働いたことが確認できたら、1/5相当(上限16万円)を追加
- 合わせて受講費用の最大70%相当・上限56万円
特徴は、キャリア相談(無料の伴走支援)・講座受講・転職支援がセットになっている点。申請は、国から採択された補助事業者(民間)を経由します。実施期間は令和8年度末(2027年3月末)までとされていて、新規の公募状況は時期によって変わるため、利用を検討するなら公式サイトで最新の受付状況を確認してください。
注意|同じ「56万円」でも別物。経産省事業の最大56万円と、前章の専門実践教育訓練の70%・上限56万円は、金額が同じでもまったく別の制度です。財源も目的も申請経路も違い、同じ講座で両方を重ねて受けることはできません(併給不可)。どちらか一つです。
教育訓練休暇給付金|2025年10月新設・在職のまま学ぶ

意外と知られていないのが、2025年10月に新しくできた「教育訓練休暇給付金」。これは会社を辞めずに、長期の休暇を取って学び直す人を支える制度です。
従来は「退職しないと失業給付が使えず、在職で長く学ぶには無給休暇のコストを個人がまるごと負う」という空白がありました。それを埋めるのがこの給付金。ポイントは次の点です。
- 在職のまま、就業規則等に基づく連続30日以上の無給の教育訓練休暇を取ること
- 休暇開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あること
- 5年以上、雇用保険に加入していた期間があること
給付額は失業給付(基本手当)に近い水準とされますが、具体的な給付率や最大日数は、公式で確認できる数値が限られます。金額の目安はハローワークで確認してください。もう一つ大事なのは、会社の就業規則に「教育訓練休暇制度」があることが前提だという点。つまり会社の制度整備と休暇の手続きが必要で、後述のとおり会社の関与が発生します。
求職者支援制度|無職・主婦で雇用保険がない人向け

雇用保険を受けられない人——退職して給付が終わった、そもそも加入していなかった、主婦(主夫)で働いていない、といった立場の人が使えるのが求職者支援制度。無料の職業訓練を受けられ、要件を満たすと「職業訓練受講給付金」月10万円+交通費が支給されます。ただし収入・資産の要件が厳しめです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 本人収入 | 月8万円以下 |
| 世帯収入 | 月30万円以下 |
| 世帯の金融資産 | 300万円以下 |
| 出席 | 全訓練日に出席(やむを得ない場合も8割以上) |
このほか、ハローワークに求職の申込みをしていること、雇用保険の受給資格者でないことなどの条件があります。「AIを学びたいけれど、雇用保険が使えない」という人の受け皿として知っておく価値があります。詳しい要件はハローワークで確認してください。
会社にバレるか|申請経路で違う

「勤務先に知られずに使えるのか」——在職中に学び直す人が、いちばん気にする点だと思います。結論は「制度によって、会社の関与度がまったく違う」です。
| 制度 | 会社の関与 | 勤務先に知られるか |
|---|---|---|
| 教育訓練給付(3区分) | 不要(本人がハローワークへ直接申請) | 知られずに使える |
| 教育訓練休暇給付金 | 必要(就業規則の休暇制度・休暇取得) | 会社の手続きを伴う |
| 経産省 リスキリング支援事業 | 転職が前提 | 転職活動を伴う |
つまり、勤務先に知られたくないなら、教育訓練給付が第一候補。これは受講者本人がハローワークに直接申請する仕組みで、勤務先の許可も関与も要りません。給付金は自分の口座に振り込まれます。一方、教育訓練休暇給付金は会社の就業規則にもとづく休暇が前提なので会社の手続きを通りますし、経産省事業は転職が前提なので在職中に使うなら転職活動を伴います。「会社に知られたくない」という観点でも、どの制度を選ぶかで話が変わるんです。
申請の流れと、併給・注意点

制度を選んだら、次は申請です。ここでつまずくと「対象だったのに給付を受け損ねる」ことになるので、基本的な流れと注意点を押さえておきましょう。とくに「受講してから申請すればいい」と思っていると、事前手続きを飛ばして受けられなくなる——これが最も多い失敗です。
申請のおおまかな流れ(教育訓練給付の場合)
- 対象講座か確認:厚労省の「教育訓練給付制度 検索システム」で、受けたい講座が指定されているか調べる(指定外は給付なし)
- 事前手続き:特定一般・専門実践は、受講前に訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードの交付を受ける
- 受講・修了:講座を受け、修了する
- ハローワークへ申請:必要書類をそろえて申請し、給付を受ける
つまずきやすい注意点
- 併給できない:同じ講座で経産省事業と教育訓練給付の両方は受けられません。原則どれか一つ
- 指定講座だけが対象:人気のAI講座でも、指定を受けていなければ給付は出ません
- 「最大◯%」は条件つき:上限は複数の条件を満たして初めて届きます
- 数字は変わる:制度の内容や金額は改正されます。申請前に必ず公式(ハローワーク・各省庁)で最新を確認
とくに専門実践や特定一般は、受講前のキャリアコンサルティングが必須。「良い講座を見つけたから申し込んだ」だけでは事前手続きが抜け、給付を受けられません。申し込む前に、対象講座かの確認と事前手続きをセットで進めるのが鉄則です。対象になりそうな講座やスクールを探すときは、生成AIスクールの比較や、学び方の全体像はAIリスキリングの始め方もあわせてどうぞ。
よくある質問

自分がいくら戻るか、どう決まりますか?
制度の上限額ではなく「満たした条件の数」で決まります。たとえば専門実践は、受講だけなら50%、資格取得+就職で70%、賃金5%上昇でようやく80%です。上限だけで判断しないでください。
会社にバレますか?
制度によります。教育訓練給付は本人がハローワークへ直接申請するため勤務先の関与は不要で、知られずに使えます。一方、教育訓練休暇給付金は会社の休暇制度が前提、経産省事業は転職が前提です。
主婦や無職でも使えますか?
雇用保険を受けられない場合は、求職者支援制度が候補です。無料の職業訓練に加え、収入・資産の要件を満たせば月10万円の給付が受けられます。
個人事業主・フリーランスは対象ですか?
経産省のリスキリング支援事業は対象外です(雇用契約を結ぶ在職者が対象)。教育訓練給付は雇用保険の加入状況によります。
2026年も使えますか?
経産省の事業は令和8年度末(2027年3月末)まで実施予定です。教育訓練給付は継続中です。ただし制度は改正されうるので、申請前に公式で最新をご確認ください。
複数の制度を同時に使えますか?
同じ講座について、経産省事業と教育訓練給付を重ねて受けることはできません(併給不可)。原則どれか一つです。
経産省の56万円と専門実践の56万円は同じですか?
別の制度です。金額が同じでも、財源も目的も申請経路も異なり、同じ講座で両方を受けることはできません。
まとめ

リスキリング補助金は、「自分がどの立場か」で使える制度が決まり、「いくら戻るか」は到達した条件の数で決まる——この2点を押さえれば、迷いません。
この記事のポイント
- 入口は雇用保険に入っているかで分かれる
- 専門実践の「最大80%」は3段階(受講50%→就職70%→賃金上昇80%)。受講だけなら50%
- 経産省事業=在職者・転職前提(個人事業主は対象外)。最大70%相当・56万円
- 教育訓練休暇給付金(2025年10月新設)は在職のまま。雇用保険5年加入が要件
- 無職・主婦は求職者支援制度(月10万円)
- 会社にバレたくないなら教育訓練給付(本人申請で関与不要)。併給は不可
制度は改正されます。実際に申請する前に、必ずハローワークや各省庁の公式で最新の条件・金額を確認してください。使える人にとっては、負担を大きく下げられる強力な仕組みです。AIリスキリングの始め方や生成AIスクールの比較もどうぞ。
給付金の対象になりそうな講座から選びたいときは、料金と給付金対応を横に並べた比較が便利ですよ。


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